遥かなる50年

少し前になりますが、去年の11月に放送された「遥かなる約束」という
スペシャルドラマをご存知でしょうか?
戦争中にソ連軍にスパイとして逮捕され、ずっとソ連に抑留されたまま50年
経て日本に帰ってきた男性の半生を描いたドラマで、これが何と実話なんです。
実はこの作品、佐々木蔵之介さん主演で舞台化されていて、私は舞台を
観に行ったんですが、いまだかつて生の舞台を見てあんなに泣いた事は
ない、というくらい泣きました(^_^;)
「アンビリバボー」とかでもドキュメンタリーが放送されていたので内容を
知っている方も多いかもしれませんが、一応ご説明を。
戦争中に病気になり兵隊に行けなかった蜂谷彌三郎さんという方が主人公。
兵隊になれないならと、朝鮮にある兵器工場で働くために一家で海を渡ります。
家族は妻と生まれたばかりの娘。
しかし戦争が終わり、敗戦国となってしまったために運命が狂い始めます。
善意で助けてあげた日本人からスパイとして密告され、
ロシア兵に連行される彌三郎。
妻、久子は幼い娘を抱えて必死の思いで日本に帰国します。
一方彌三郎はシベリアの極寒の地で屋外強制労働
させられるのですが、ある出来事から機転を利かせて理容師として
収容所内で働き始めます

真面目な働きぶりが認められ、収容所を7年で出ることが出来たのですが、
依然スパイ容疑が晴れず、帰国はおろか収容所のあるシベリアの最果ての
町を出ることすら許されない日々が続きます。
そんな中でも日本に帰って妻と娘に再会する、という希望
決して捨てない彌三郎。何とかして自分の無事を知らせようと様々な手段を講じ、
ついに日本にいる久子の元に、死んだとされていた彌三郎の生存が知らされます。
舞鶴港で娘と二人、引揚げ船から降りてくるはずの彌三郎を待つ久子ですが、
スパイ容疑がかかったままの彌三郎の姿はありませんでした。
でも、居場所がわかった久子は諦めずに手紙や小包を彌三郎に送ります。
その小包さえも検閲を繰り返された挙句に彌三郎の手元に届いたのは何と
3年後。そこに入っていた成長した娘の写真を見てますます郷愁を募らせる彌三郎。
写真の裏には娘が書いた「わたくしは、おとうさんにおあいしたいと
おもいます。はやくかえってください」
と言うメッセージ。
自分を監視しているロシアの特務機関員に必死で無実を訴える彌三郎でしたが、
「お前は一生ここから出られない」と言われ、絶望した彼は
ついに帰国を諦め、久子に宛てて「自分を忘れて娘のためにも再婚して幸せに
なってほしい」と手紙を書き、自殺を図ります
未遂に終り一命を取りとめた彼は友人に「ロシア人になった方がこの先この国で
生きていくには都合がいい」と勧められ、ロシア国籍を取る事に。
あとはただ黙々と日々を過ごしていた彼がある時出逢った一人のロシア人女性、
クラウディア。彼女との出逢いがさらに運命を変えて行きます。
彼女も無実の罪で10年間服役した経験を持ち、その間に家族とも別れる
羽目になったりと、境遇が似ていたためにお互いの思いが分かり合え、
惹かれあった二人は結婚します。
二人でひっそりと身を寄せ合って暮らし、数十年が過ぎますが、
そんな日々の暮らしの中でもふとした瞬間に感じる彌三郎の日本への、
そして家族への思い
をクラウディアは見過ごしませんでした。
ソ連が崩壊し民主主義国家ロシアとなって数年後の1997年、日本にいる
久子と娘、久美子の存在を知ったクラウディアが取った行動。それは彌三郎と
離婚し、彼を日本の家族の元に帰すための帰国許可を取る事。
それを一人で決断した彼女は11時間かけて列車で日本領事館に出向き、
全ての手続きを済ませてから家に戻ってきます。
突然「日本にいる家族の所に帰りなさい。私達は離婚したのよ。」と言われて
戸惑う彌三郎。自分はこのままロシアの地に骨を埋める覚悟だと言う彼に対し
クラウディアは「ここにはあなたと暮らした37年の温もりがある。私にはそれが
あれば十分。」と、帰国を促すのでした。
彌三郎帰国の日、クラウディアは笑顔で彼を見送ります。しかし彼を乗せた
列車が遠ざかった途端その場に泣き崩れるクラウディア。
列車の中では彌三郎がクラウディアに渡された手紙を読んでいます。
他人の不幸の上に自分の幸せを築く事はできない」
というクラウディアの決心を読み、涙する彌三郎。
日本では久子と久美子が50年ぶりに再会する彌三郎の到着を今か今かと
待ち構えていました。無事に日本に帰ってきた彌三郎は今も久子と穏やかな日々を
過ごしながら、クラウディアとの交流も続けているそうです。

長くなってしまいましたが、これが実話だなんて信じられますか?
スパイ容疑で誤認逮捕される、という事は戦争中ならば、
まして日本国外にいたなら遭遇してしまう可能性がある事なのかもしれませんが、
その後50年をスパイ容疑がかかったまま過ごす、という過酷な現実
もちろん拷問もされ、強制労働で病気になったりもし、見ていて本当に辛い
状況にいた蜂谷さんが、妻子の元に帰る希望を捨てなかったことがまず凄い。
そして必ず夫が生きていて自分達の所に帰ってくると信じつづけた妻、久子さん。
いつ旦那さんが帰ってきても恥ずかしくない生活をしなければと資格を取って
保健婦として働き、女で一つで娘さんを大学にやり、家まで建てた彼女も
本当に凄い女性だと思います。
さらにクラウディアさんの行動は私にとっては衝撃でした。
最初の出会いで「いつか私があなたを日本の家族の所に帰してあげる」と、
蜂谷さんが帰国するために協力すると約束はしても、その後何十年も経って、
自分達の生活が「日常」となっているのにちゃんとその約束を果たして蜂谷さんを
日本に帰国させた彼女。
私だったらそのまま死ぬまで一緒にいようとすると思うし、一人で残されるのは
心細いと思うんですが、「自分の幸せのために他人を不幸にしたくない」と、
日本に居る妻子の所に蜂谷さんを帰したクラウディアさんは、ものすごく
「清らか」「純粋」、そして「強い」人だと思いました。
途中から号泣しながら見たんですが、感動もしたけど、切なくて辛いという
感情の方が強かった気がします(T_T)。
そして戦争とは何て残酷なんだろう、と改めて思いました。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

足立区の住民
2008年08月15日 21:19
はじめまして、お盆を迎えましたが、久子様が
天国にいかれて、2年たちました。
弥三郎さんは、気高町で1人で暮らしているのでしょうか?

さとらん
2008年08月17日 13:04
コメントありがとうございます。
久子さんが亡くなられていたとは
全く存じ上げませんでした。
彌三郎さんがお元気で平和に
暮らしていらっしゃることを
お祈りしています。。

この記事へのトラックバック